愚者が旅する輪廻転生物語り

◆「マルセイユ版タロットカード」と「「ウエイト版タロットカード」の違い

愚者が旅する輪廻転生物語の前に、タロットカードの種類をご説明いたします。
タロットカードには、大きく分けて多くのタロットカードのルーツとなっている「マルセイユ版タロットカード」系と、近年多く出回っている「ウェイト版タロットカード」系の2種類が存在します。

「マルセイユ版タロットカード」                                          「ウェイト版タロットカード」

マルセイユ版タロットカード

ウエィト版タロットカード

通常、どちらのタイプのタロットカードも大アルカナと小アルカナを含めて全部で78枚で構成されており、その中の大アルカナは全部で22枚あります。
ですが、「マルセイユ版タロットカード」と「ウエイト版タロットカード」の絵柄には、数々の違いがあります。
その一つに、「マルセイユ版タロットカード」の「愚者」は番号を持ちませんが、「ウェイト版タロットカード」の愚者は「0」ゼロという数字が振ってあります。
※稀にマルセイユ版でも「0」という数字を振ったものもあります。

            マルセイユ版「愚者         ライダー版「愚者」
マルセイユ版の愚者とウエイト版の愚者

更に、愚者の視線や顔の向きがマルセイユ版の愚者は右向き、ウェイト版の愚者は左向きと全く違います。
因みに、タロットカードはスリーカード展開(展開=スプレッドといいます)の場合、カードを三枚引いて占うのですが、左側が過去・真ん中が現在・右側を未来とみていきます。

そして、8番目と11番目のカードが入れ替わっていることも大きな違いとなります。
マルセイユ版の8番目の正義は、ウエイト版では本来11番である力が8番に入れ替わっており、マルセイユ版の11番の力がウエイト版では本来8番である正義が11番に入れ替わっています。

             マルセイユ版「正義」         ライダー版「力」
マルセイユ版タロットカードとウエイト版タロットカードの違い

              マルセイユ版「力」        ライダー版「正義」

その他、絵柄の中の人物の向きや色彩、小アルカナの絵柄など大きな違いがたくさんあるのですが、ここではその詳細はまたの機会に触れたいと思います。

◆愚者が歩む輪廻転生の旅

「マルセイユ版タロットカード」22枚の大アルカナは、数字を持たない1枚の愚者と数字を持つ21枚のカードによって構成されており、その大アルカナで愚者が歩む人生の修行と魂の成長の物語を辿ることができます。
22枚の大アルカナの中の絵柄で唯一移動している人物が「愚者」です。
「愚者」は、右方向に向かって移動しています。
右は未来を表し、「愚者」を除いた残りの絵柄の「①手品師」から「㉑の世界」の21枚の各大アルカナは、数を持たない愚者の魂の成長を遂げるための旅の途中に立ち寄る宿場のような意味を持ちます。
マルセイユ版タロットカード大アルカナ※下段の手品師から戦車までは地上界を表し、中段の正義から節制までは天使界を、上段は悪魔から世界までで、天上界に相当します。

先ず、「①手品師」から「⑦戦車」までは所謂人間界の社会的価値観の刷り込みを表す宿場となります。

最初の宿の始まりは、子供である「①手品師」の宿から。
「①手品師」(子供)は、テーブルの上に玩具が並べられ無邪気に落ち着きなく遊んでいます。
マルセイユ版愚者  マルセイユ版手品師

遊び疲れると「②女教皇」(祖母)が、孫を落ち着かせるために昔話の物語の本を読んで聞かせてくれます。
そして、子供は眠りにつくのです。
マルセイユ版女教皇
翌朝、子供が目覚めると③女帝(母親)の支配がはじまります。
マルセイユ版女帝
何故なら、女帝が持っている王勺(ワンド)は支配を意味するからです。

次に、④皇帝は(父)を表し、同じく王勺(ワンド)を持って子供を支配します。
マルセイユ版皇帝

そして、いつの間にか学童へと成長した子供は学校という教育機関で、「⑤法皇」(先生)の支配にあう。
マルセイユ版法皇
※(三重十字の杖(ワンド)と、法皇がかぶっている三重冠も支配を意味する)

そして、内でも外でも親や先生などの大人から、将来は「⑥恋人」成人し結婚して家庭を持ち、「⑦戦車」のように、家の一軒も建てて車も持てるよう社会的な地位や財と名誉を得るなどといった、社会的価値観を刷り込まれていく。
マルセイユ版恋人マルセイユ版 戦車

しかし、ここまでに至ると一般的価値観にとらわれない者や、価値観に拘束され押しつぶされそうになる者も出てくる。

そこで、人は時として神仏に縋ることも・・・

そのとき必要になる神仏が「⑧正義」であり、正義の首にかけている縄は仏教的にはまるで不動明王(不動明王が左手に縄を持ち、社会的価値観の拘束を右手の剣で断ち切ることができる)のようだが、正義の左手には善と悪を二元論的価値観という天秤が残っているのでまた迷いが生じる。
マルセイユ版 正義

※「マルセイユ版タロットカード」では8番は「正義」ですが、「ウエイト版タロット」8番は「力」で入れ替わっています。

その迷いは、はたして親や先生たち大人が言っていることが正しいのか?
しかし、自分が垣間見る世界は大人が言っていることとは随分と違うではないかと言うように現実とのギャップが生じることも。

そこで、「⑨隠者」で探求の旅に出る。
マルセイユ版 隠者

隠者は真理を求めるカンテラ(ランプ)で過去(左側、愚者が辿ってきた方向)を照らしています。
それはまた、心理を求め旅をする人々にとっての灯火にもなっており、愚者は、隠者となって現実世界を見渡してみます。

すると、この世の仕組みが、まるで「⑩運命の輪」のように欲望にまみれる猿と欲望を離れようとする犬が、苦海の世界で時間という輪をまわしており、決して幸せそうには見えない。
マルセイユ版 運命の輪

これは、チベット仏教の六道輪廻図の如くの運命の輪で、そこからの解脱(社会的価値観からの脱出)を誘っているかのようだ。
※六道とは、天界道、人間道、修羅道、餓鬼道、畜生道、地獄道の6つことを言います。

そして、愚者は新たな旅立ちを試みる。

しかし、価値観の矛盾が見えてきたとき、その価値観に立ち向かおうとする勇気を象徴する「⑪力」の獅子と戦おうとするも、この世の中は簡単に奇跡は起こりはしないわけで、また、ここで挫折を味わう。
マルセイユ版 力
※「マルセイユ版タロットカード」では11番は「力」ですが、「ウエイト版タロット」11番は「正義」で入れ替わっています。

そして、「⑫吊られた男」のように、身動きが取れない状況に引きこもる。
マルセイユ版 吊られた男

※この状況には、「⑤法皇」の(学校)支配から、登校拒否という形で直接ワープしてくる人もいる。

あるいは、「⑥恋人」の恋愛や結婚から失恋や離婚という出来事を通して、「⑬13番(死神)」へと直接ワープしてくる人もいる。
マルセイユ版 死神
ウエイト版では「死神」と呼ばれているがマルセイユ版は名前を持たず「13番」という数字だけを持つ。

名前のないこの「13番」は鋭い鎌で黒い土を耕している。
その土の中には、捨てられない過去の様々な思い出が詰まっており、黒い土の上で広げられている手や生首は、まだ自分が死んだということを自覚できないほどの欲望の象徴であり、「⑫吊られた男」の引きこもりからこの欲望の苦しみの「13番」という辛い試練を経て、「⑭節制」で人を癒す天使となる。
マルセイユ版 節制

まるで仏教の水瓶を持った観音菩薩のように、左右に持った壺(慈悲というなの水が詰まっている)で人々を救おうとする。
しかし、天使も一歩間違うと時として天使と悪魔というように堕落の誘いを受け、たちまち「⑮悪魔」に支配されてしまう。
マルセイユ版 悪魔

まるで、カルト教の教祖に支配されるが如く弄ばれ煩悩に塗れる。
しかし、煩悩という妄念・欲望は目覚める時が来る。

悪魔の誘惑に打ち勝った「愚者」は「⑯神の家」で、覚醒し低位の魂が高位する。
マルセイユ版 塔

※「ウエイト版」では、稲光に打たれて建物が崩壊したような絵柄で「塔」と言いますが、「マルセイユ版」の絵柄では、レンガの建物に神の光が下りてきてまるで建物に王冠が落ちてくることから、「⑯神の家」と言います。

「神の家」で高位した魂は「⑰星」で、希望というポジティブな波動を受け「⑱月」で物事が少しずつ霧が晴れていくように前向きに考えられるようになる。

マルセイユ版 星   マルセイユ版

そして、「⑲太陽」で強固な生命力を授かる。

マルセイユ版 太陽

その生命力は「⑳審判」で蘇り「㉑世界」でめでたく完結となるのです。
マルセイユ版 審判 マルセイユ版 世界

が、しかし「㉑世界」の絵柄の裸体の人物は歓喜の踊りを踊りながら、今まで「愚者」が来た方向左側をじっと見つめています。

それは、愚者の旅がここで終わるのではなく、まるでこれまで経てきた経験を、同じように現世的価値観に苦しんでいる人々を救済するために、「輪廻転生」即ち振り出しに戻ることを示唆しているのです。

※輪廻転生(りんねてんしょう)とは、魂が生まれ変わりを繰り返すことを意味する仏教用語です。

以上、愚者が旅する輪廻転生物語りでしたが、意外にも「マルセイユ版タロットカード」は、仏教的にも相通じる思考が潜んでおり神秘的で奥が深いタロットカードではないかと思います。

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